コラム~第78回「土地建物を売却した場合の総収入金額の収入すべき時期」
2025.11.19
所得税法基本通達36-12には、不動産を売却した場合は、資産の引渡しがあった日によるものとする。ただし、納税者の選択により、契約の効力発生の日(いわゆる契約締結の日)により申告できるとなっている。
ここでいう、「資産の引渡しの日」とはいつの日をいうのであろうか。
そこで、通達では「資産の譲渡の当事者間で行われる当該資産に係る支配の移転の事実(例えば、土地の譲渡の場合における所有権移転登記に必要な書類等の交付)に基づいて判定をした当該資産の引渡しがあった日」によるとなっているが、現実では、迷うことが多い。
最近、税務調査があり、資産の引渡しの日として登記移転の日をもって申告するように指摘を受けた。その案件は、借地上の自宅を借地権付建物で譲渡した。納税者側としては、自宅を明け渡した日を引渡しの日として考えていたが、その契約では、中間金として契約金額の90%支払ったときに、建物の登記を移転するとなっていた。買主は、債権保全のために登記を移転した訳であるが、税務署は代金90%を支払い登記移転した日をもって譲渡の日と主張してきた。確かに、その契約では、登記移転した日以降使用貸借で自宅を使用できるとなっていたため、形式的に登記の移転日において譲渡と判定された訳である。
これについては、東京高裁の判決(平成24年5月17日)があり、契約締結時、代金を90%支払、登記を移転したが自宅等の明け渡しは留保されており、納税者は明け渡した日をもって申告しようとしたが、税務署の指摘を受け登記した日により期限後申告を行い、更正の請求、不服申立、裁判により、その日を戦ったが敗訴した。その理由として、登記移転をした後は、使用貸借契約があり、公租公課が負担しておらず、民法183条の占有改定があったと判断され敗訴している。
このように、形式的な安易に移転登記することは実務上問題があり、不動産の契約を行う場合には、引き渡しの日が重要であり、買主の債権保全のため安易に移転登記の協力することはリスクがあることを注意したい。
