コラム~第70回「扶養義務者の資金移動」
2025.8.6
親が高齢で介護老人ホームに入居している場合には、相続人である子が生活の面倒を見ることが多い。
その場合、親の名義預金を子供が降ろし、子供名義の預金に移動し親の介護費用や自分の生活費に費消することが見られる。それは、親の名義預金については、引き出すのに親の印鑑等が必要で利用が困難なためでもあるから、そのような方法を取るのである。
そのような金額については、どのようになるのであろうか。
基本は、相続開始時に子供の預金に残金が残っているのであれば、贈与又は名義預金として課税することとなろう。
また、出金された現金が、被相続人の生活費や医療費等に費消された場合とか子供である扶養親族の生活費や教育費等に費消されているには、通常生活費として認められる場合には贈与税がかからないとされている。
基本は贈与税の問題であろう。
最近、相続税申告において、生前10年間引き出した金額について、相続時点で残高がない状態であるのにも関わらず、税務署は贈与税の対象とするのではなく(3年以内では税金が大したことがないので)、被相続人に対する不当利息返還請求権として修正申告するようにとの指導を受けた。(相続人は子供1人である。)
相続人に対する不当利息返還請求権とするのであれば分かるが、死亡した被相続人に対する不当利息返還請求権というのはいかがなものであろうか。
ずいぶん無茶な言い分である。