コラム~第60回「自社株の譲渡」
2025.2.13
令和4年最高裁判決における評価通達6項による不動産時価課税が認められた。その後、課税庁において6項による時価課税が増えてきている。
最近目立つことは、6項の課税庁の時価課税自社株の相続税評価、譲渡による低額譲渡について6項適用による自社株評価が問題とされ、地裁、高裁で課税庁が敗訴する事例が出てきた。
令和6年8月には、東京高裁において、自社株を相続し、その自社株の評価を評価通達で計算し申告したが、その自社株については、相続前にM&Aを計画し、その自社株の予定価格は決まっていたが、そのM&Aの契約締結前であることから、相続税評価額で申告した。課税庁は、その自社株について、予定価格は決定されており、相続後その予定価格で売却していることから、その売却価格を時価と見なして6項を適用して課税処分を行った。その課税処分の是非が争われ、東京高裁で納税者の相続税評価額が認められ、課税庁の処分が否認された案件である。
その理由としては、予定価格については、公開市場における価格ではないこと、M&Aという特別な市場における取引価格であり、適正な客観的交換価値を示していないこと、相続税の租税回避行為が認められる特別な事情が認められないことなどを理由として、納税者側の主張が認められている。
このことから、6項適用については、価格については、オープンな市場で決定された価格を前提とすること、過度な租税回避とした特別な事情があることが要件とされている。