活動報告

コラム~第47回「純山林の評価」

2024.7.24

最近、当事務所では、相続における純山林の評価の依頼が多い。特に、神奈川県の市街化区域においては、地形的にアップダウンが多く、丘陵地帯に宅地開発された分譲地が多く、分譲地の残地として山林が見られる。

相続税法の土地評価であれば、市街化調整区域内の山林については、宅地開発不可となるために、山林の単価に倍率を乗じて評価することとなるが、市街化区域の山林については、宅地比準方式となるために、その山林について、宅地開発可能かどうかの判定がキーポイントとなる。しかし、現実的には、宅地開発可能がどうかの判定においては、その山林の傾斜度、道路付、宅地造成費等を計算して判断することとなるが、その計算については非常に難しい。

よくある例としては、当初申告では、机上において評価通達における無道路地、傾斜造成費等を考慮して申告することとなるが、その相続税評価額は路線価の40%~50%の評価額となり、その山林の適正な時価に比較して5倍~10倍となるのが通常である。併せて、当初申告では、評価通達の評価で申告し、後で更正の請求を行い認めてもらうこととなるが、不動産鑑定士に依頼して宅地造成想定図、高低差測量、精緻な宅地造成費等を計算し、当初申告の評価に誤りがあったと立証をすることとなる。しかし、その費用と時間がかかることとなり、さらに、税務署は、純山林として評価を認めた場合、㎡当たり300円程度の価格になり、評価減額する価格が当初申告の評価額の1000分の1程度となり、なかなか認めてくれない実情がある。

したがって、更正の請求で決着つけるのではなく、不動産鑑定士の意見書を活用し、納税者の同意を得て、当初申告で純山林の申告をすることをお勧めしたい。

当初申告では、その純山林の評価を否認するには、税務署側において立証責任があり、否認することについてハードルが高い。

なお、最近では、国土地理院の地形図をもとに傾斜造成費を計算する方法があるが、その計算では立証不足として否認することが多くなり、やはり、専門家に依頼して、高低差測量や宅地開発図をもとに宅地造成費を計算する等、精緻な立証が求められることに注意を要する。

 


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