コラム~第39回「相続分の譲渡と放棄」
2024.3.26
民法上では、相続を放棄する手続きの制度がある。その手続きは、被相続人が相当な借入金を有する場合、相続を放棄することを家庭裁判所に相続開始があった日より3か月以内に申し出ることにより、被相続人の借入金の承継をしなくても済む制度である。
これ以外に、遺産分割において相続人が遺産を取得したくない場合や遺産分割に参加したくない場合には、相続分の放棄や相続分の譲渡(無償又は有償)することもできることとなっている。この制度は、家庭裁判所に申し立てをしなくてもできる。しかし、相続放棄と異なり、被相続人の借入金等は承継されることになることに注意を要する。
また、この相続分の放棄や譲渡をすることにより、相続税の申告が問題となる。相続分の放棄又は譲渡については、判決等において遺産分割が一部終了したとみなされない。
判決(さいたま地裁平成17年4月20日、東京地裁平成21年10月8日)においては、相続分の譲渡又は放棄については、単独行為であり、相続人全員による遺産分割とみなされないように判示されている。
しかし、相続分の有償による譲渡については、代償金と同じような税務の取り扱いがある。
したがって、相続の放棄によって、相続税の申告は必要なくなるが、相続分の譲渡又は放棄については、未分割でも相続税の申告が必要な場合もあるので、注意をしたい。