活動報告

コラム~第18回「押印制度」

2022.12.5

2020年に発生したコロナ禍において、日本ではいろいろな救済制度として補助金、助成金、給付金等の支給制度を創設し中小企業等を支援した。しかし、政府、自治体のITシステムが全国的に統一されておらす脆弱であったためにその制度がうまく機能しなく、大きな問題となった。そのために日本政府としては2021年9月にデジタル庁を創設し、行政庁のIT化を図ることとなったが、欧米各国、中国、韓国などの国より相当遅い対応である。

また、2011年の東北大震災では、紙ベースの保存を前提にしていたところ地震の津波ですべて住民データが喪失したことを反省し、2013年にマイナンバー制度導入したが、その普及が遅れ今回のコロナ禍の対応ができなかった経緯がある。ようやく日本もデータ管理に目覚めた訳である。

ところで、この原因となったのは、政府の告知にも問題があるが、根底には、日本のマスコミ、国会議員、弁護士等の知識人が普及に協力しなかったことである。おそらく、前述した知識人等のなかでマイナンバーを持っていない人がほとんどいないと言われている。政府の政策に積極的に協力しない知識人がいることは中国、韓国では考えられないことであろう。

そこで、日本においても行政庁のIT化の手始めとして、2021年の税制改正において、日本の印鑑制度の見直しを図ることとなった。これは画期的なことである。

改正では、2021年4月から国税、地方税の関係書類(申告書、申請書、届出書等)における本人の押印を不要となった。

今までは、日本においては、役所の手続には必ず署名して押印をする必要があった。押印していないものについては、受け付けてくれなく、押印のない書類自体が無効になっていた。そのことが行政のIT化に妨げとなっていた根本原因であった。

ところで、印鑑制度がある国は、世界では、日本をはじめ中国、韓国、台湾だけのようだ。

欧米ではサイン社会であるが、日本では、本人がサインをし、更に本人が印鑑を押すことは本人の二重確認であり、日本の印鑑制度は世界的に奇異に見られていたわけである。

中国では、個人の印鑑登録制度はなくサインで済み、会社では社判として角印を押す習慣がある。韓国では、戦前日本の印鑑制度が導入したが最近では偽造が多くなり印鑑制度は中止する方向があるようである。台湾では、戦前日本の印鑑制度が導入され、現在でも日本と同様な印鑑制度となっている。

このように日本における印鑑制度の廃止については革新的である。ただし、注意をしておきたいのは、行政文書は、基本的に押印不要となったが、契約書等の私文書では、まだ押印が必要となることを留意する必要がある。


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