コラム~第16回「複式簿記」
2022.11.8
世界の会計制度の基本は複式簿記にある。この複式簿記制度は、1662年頃イギリスがアジアの植民地の管理のためにインドにアジア貿易会社(「イギリス東インド会社」)を設立して、その会社の会計と監査のために複式簿記による会計制度がつくられたといわれている。
その会計制度が、各国に広まり、日本においても明治時代に旧商工省がその会計制度を導入し、複式簿記による会計制度がスタートした。
現在では、その会計制度を各国が導入し、その会計制度を基本として各国独自の基準が作成され運用されている。しかし、各国の会計制度における企業利益等の考え方が異なることから問題となり、現行では、IFRS(国際会計基準)制度がつくられ、その会計制度に統一しようとしているが、まだ、統一化が遅れているのが現状である。
日本においては、IRESに完全に準拠しているのではなく、日本独自の会計基準があり、日本の上場会社は日本の会計基準で財務諸表が作成される。また、アメリカの会計基準は、GAAP(ギャップ)制度となっており、アメリカの独自の基準であり、IFRSとは、大きな大差はないが、減価償却方法等が異なっている。したがって、日本の上場会社がアメリカで上場する場合は、そのGAAPを使用することとなり、日本向けの財務諸表とアメリカ向けの財務諸表を複数作成する必要がある。
このように世界の会計制度については、基本的には規則主義か原則主義かの立場を取っており、日本やアメリカは規則主義が採用され、IERSでは、原則主義を採用していることに違いがみられる。規則主義では、規則により決められた会計基準を前提とし、原則主義のIFRSでは各国会社の判断に委ねることとなっている。
したがって、各国の会計基準が統一化されていないことから、各国の財務諸表を比較検討する場合、日本の会計基準とは異なる部分があることに注意を要する。
そもそもこの複式簿記による会計制度は、スタート時、出資する組合員の組合方式での会計管理であり、出資と経営が一体となり、その組合員のために儲けを計算し、分配するために作成されていた。その後、組合方式から株式会社方式に移行し、経営と株主が分離し、投資家である株主の利益保護を中心として会計制度が作成されるようになった。
アメリカの会計制度は個人投資家のパートナーシップ制度が中心となり、儲けを前提とし、その儲けを配当することが重視されている。
一方、日本では、儲けの配当よりは、会社に内部留保することが重視される傾向があり、文化慣習による会計制度の違いがみられる。
また、各国の会計制度と税務会計制度とは異なっており、この違いも注意したいものだ。