コラム~第77回「建物の時価評価」
2025.10.7
税務上、建物を売買する場合の時価について、以下の価格のどれが適正化か聞かれる。
①建物の固定資産税評価額、 ② 建物の固定資産税評価額÷0.70
③建物残存帳簿価格 ④ 鑑定評価額
建物の固定資産税評価額については、地方税法第341条で、固定資産税における価格とは「適正な時価をいう」旨を規定しており建物の時価と推認される。また、裁決事例、判決事例でも採用されていることから有力な資料である。
次に、建物の固定資産税評価額を0.70で割り戻す価格はどうであろうか。土地の固定資産税評価額を0.70で割り戻すことは時価とみなして問題がないと思うが、建物の評価においては固定資産税評価額は時価の0.70として計算するとの規定はなく、あくまでも建物の評価は再調達原価をもとに評価していることから理論的価格とはいえず問題がある。
建物残存帳簿価格については、法人税における減価償却資産の評価損計上時の時価の取扱いとして、再取得価額を基として取得時からの減価償却を行った後の未償却残高とすることが認められている(法基通9-1-19)ことから、再取得価額を再計算して減価償却を控除して求められた価格が基本であるが、実際の取得価格をもとに計算した残存帳簿価格も同様に考えても良いのではないかと思われる。
鑑定評価額による方法は、時価評価の基本であるので理論的価格として認められるが、時間と費用が掛かることが難点といえる。
実務的には、不動産鑑定士に意見価格を徴収し、その意見価格から近似している①か③を採用することがベターであろう。意見価格から20%以上乖離があると鑑定評価にすべきと思われる。また、1億円以上の売買価格になるのであれば鑑定評価をすべきである。