コラム~第75回「名義預金」
2025.9.26
相続税調査においては、親子間の資金移動については相続財産としての可否判定が厳しくされる。
被相続人の口座から出金された現金が、相続開始時において残っていれば預け金として財産計上するか生前贈与として処理することとなる。
一方、被相続人の出金された現金が被相続人の生活費や医療費、公租公課等に費消されていれば相続税の課税問題が生じない。また、配偶者や親子等の扶養親族の生活費や教育費、医療費等に費消されていれば、通常生活に必要な費用として課税上問題はされないこととなっている。
最近、税務調査で名義預金の判定において、贈与税の時効にかかる贈与金について、不当利得返還請求権があるものとして課税することもみられる。
不当利得返還請求権とは、一部の相続人によって遺産分割前に使い込まれていた相続財産を返すよう求める権利をいうのであるが、その場合、相続人間で訴訟手続きにより確定するものが通常である。
そこで、一人の相続人が費消された金額を他の相続人の権利として税務署側が不当利得返還請求権を主張して財産として課税されることはできるのであろうか。
さらに相続人1人の場合にも認められるのであろうか。相続人1人しかいない場合には、自分が自分に対して不当利得返還請求権を主張できるのであろうか。混合により債権が消滅するのではないだろうか。最近、そのような裁決(広島審判所:令和3年6月24日)を見たことがある。
少し強引なやり方であろう。